コロナ後の地方ビジネス最新事情──中小企業に追い風となる業界TOP5

コロナ禍を経て、日本のビジネス環境は大きく変化しました。

特に地方の中小企業にとって、この変化は「ピンチ」であると同時に「チャンス」でもあります。

リモートワークの普及、インバウンドの急回復、地方移住への関心の高まり、DX化の加速──これらの変化により、地方でこそ成長できる業界が明確になってきました。

本記事では、2024年〜2025年の最新データをもとに、コロナ後の地方ビジネスの実態と、中小企業にとって追い風となる業界TOP5を徹底解説します。


目次

  1. コロナ後の地方ビジネス環境はどう変わったか
  2. 地方中小企業を取り巻く「追い風」と「向かい風」
  3. 中小企業に追い風となる業界TOP5
  4. 業界別・成功のポイントと参入障壁
  5. 地方ビジネスで使える補助金・支援制度
  6. 成功事例:地方で業績を伸ばした中小企業
  7. まとめ

コロナ後の地方ビジネス環境はどう変わったか

まず、コロナ前後で地方ビジネスを取り巻く環境がどう変化したかを確認しましょう。

コロナ前後の変化一覧

項目コロナ前(2019年以前)コロナ後(2024年〜)
働き方出社が前提リモート・ハイブリッドが定着
人の移動都市部への一極集中地方移住・二拠点生活の増加
インバウンド年間約3,188万人年間約3,687万人(過去最高)
EC市場約19兆円約25兆円規模に拡大
DX化一部企業のみ中小企業でも必須に
地方への関心限定的「地方創生2.0」で国策化

訪日外国人数の推移

訪日外国人数前年比
2019年3,188万人
2020年412万人▲87%
2021年25万人▲94%
2022年383万人+1,432%
2023年2,507万人+554%
2024年3,687万人+47%(過去最高)

2024年の訪日外国人数は過去最高の3,687万人を記録し、インバウンド消費額は8.1兆円に達しました。これは自動車に次ぐ規模であり、地方観光にとって大きなビジネスチャンスとなっています。


地方中小企業を取り巻く「追い風」と「向かい風」

地方中小企業にとって、現在の環境には追い風と向かい風の両方が存在します。

追い風要因

追い風内容
インバウンド回復訪日客が過去最高、地方誘客に政府も注力
地方創生2.0政府主導で地方経済活性化を推進
リモートワーク定着都市部人材が地方企業で働く選択肢が増加
DX補助金の充実IT導入補助金など中小企業向け支援が拡大
円安効果輸出・インバウンドに有利
人材の地方回帰Uターン・Iターン転職者の増加

向かい風要因

向かい風内容
人手不足地方では特に深刻、有効求人倍率が高止まり
物価高騰原材料費・エネルギーコストの上昇
金利上昇借入コストの増加
人件費上昇最低賃金の引き上げ(全国平均1,055円→目標1,500円)
後継者不足経営者の高齢化と事業承継問題
倒産増加2024年の倒産件数は10,006件に増加

地方経営者の声

「コロナで一度は売上が半減しましたが、インバウンド回復で今は過去最高の売上です。ただ、人手が足りなくて受注を断ることも増えました」(観光業・石川県・経営者談)

「リモートワークが普及したおかげで、東京の企業から仕事を受注できるようになりました。地方にいながら首都圏の仕事ができる時代になったと感じます」(IT業・福岡県・経営者談)

「円安とインバウンドの影響で、輸出と外国人観光客向けの売上が大幅に伸びています。地方の製造業にとってはチャンスだと思います」(製造業・新潟県・経営者談)


中小企業に追い風となる業界TOP5

それでは、コロナ後の地方ビジネスにおいて、中小企業に追い風となる業界TOP5を発表します。

追い風業界ランキング

順位業界追い風度参入障壁地方適性
1位観光・インバウンド関連★★★★★★★☆☆☆★★★★★
2位IT・DX支援サービス★★★★★★★★☆☆★★★★☆
3位農業・6次産業化★★★★☆★★★☆☆★★★★★
4位介護・福祉サービス★★★★☆★★★★☆★★★★★
5位建設・住宅リフォーム★★★★☆★★★☆☆★★★★☆

【1位】観光・インバウンド関連業界

なぜ追い風なのか

追い風ポイント内容
インバウンド過去最高2024年は3,687万人、消費額8.1兆円
地方誘客に政府が注力観光庁予算の88%(464億円)を地方誘客に配分
「モノ消費」→「コト消費」体験型観光への需要シフト
富裕層観光の拡大高付加価値旅行者(2%)が消費額の19%を占める
円安効果外国人にとって日本旅行が割安に

地方観光の伸びしろ

指標2019年2024年課題
外国人延べ宿泊者(地方割合)37%30%地方への分散が課題
三大都市圏の宿泊割合63%70%都市部への集中が加速
政府目標(2030年)訪日客6,000万人、消費額15兆円地方誘客がカギ

地方への誘客が課題である一方、政府は地方分散に本気で取り組んでいるため、地方の観光事業者にとっては大きなチャンスです。

地方で成功する観光ビジネスの例

ビジネス例内容ポイント
体験型観光農業体験、伝統工芸体験、食文化体験「コト消費」需要に対応
古民家宿泊空き家を改修した宿泊施設外国人に人気、高単価
アドベンチャーツーリズム登山、サイクリング、カヤックなど欧米豪からの需要大
ガストロノミーツーリズム地域の食をテーマにした観光食への関心が世界的に高い
ワーケーション施設仕事と休暇を両立できる施設リモートワーカー向け

観光事業者の声

「外国人観光客が戻ってきて、売上はコロナ前の1.5倍になりました。特に体験型のプログラムが人気で、予約が取れないほどです」(体験観光業・京都府・経営者談)

「地方の小さな宿ですが、SNSで外国人に見つけてもらい、今では宿泊客の7割が海外からのお客様です。インバウンド対応をしてよかった」(宿泊業・岐阜県・経営者談)


【2位】IT・DX支援サービス業界

なぜ追い風なのか

追い風ポイント内容
DX化が中小企業でも必須に人手不足対策としてIT活用が加速
IT人材の需要増有効求人倍率2.91倍(2024年)
補助金の充実IT導入補助金など政府支援が拡大
リモートワークの定着地方にいても都市部の仕事ができる
デジタル庁設置国を挙げてDX推進

IT関連職の有効求人倍率推移

有効求人倍率
2022年1月1.72倍
2023年1月2.03倍
2024年1月2.91倍

IT人材への需要は年々高まっており、地方でもIT関連の仕事は増加傾向にあります。

地方IT企業のビジネスチャンス

ビジネス例内容ターゲット
中小企業向けDX支援業務効率化ツールの導入支援地元の中小企業
ECサイト構築地場産品のオンライン販売支援農家・製造業・小売業
クラウドサービス導入会計・勤怠・顧客管理などのクラウド化全業種
Web制作・マーケティングHP制作、SNS運用、広告運用観光業・小売業
リモート受託開発都市部企業からのシステム開発受託大手企業・スタートアップ

IT事業者の声

「地方の中小企業はまだまだアナログな部分が多く、DX支援の需要は非常に高いです。IT導入補助金を活用してもらえば、費用面のハードルも下がります」(IT業・広島県・経営者談)

「東京の会社に勤めていましたが、地元にUターンして独立しました。リモートで東京の仕事も受けながら、地元企業のDX支援もしています。地方でもITの仕事は十分にあります」(IT業・岩手県・経営者談)


【3位】農業・6次産業化

なぜ追い風なのか

追い風ポイント内容
食への関心の高まり安全・安心な食、地産地消の需要増
6次産業化の普及生産から加工・販売まで一貫して行うビジネスモデル
EC販売の拡大産直EC(食べチョク等)の利用者増加
輸出の増加農産物輸出額は過去最高を更新
補助金の充実6次産業化支援補助金など
スマート農業IT・ロボット活用で省力化が可能に

6次産業化とは

産業内容
1次産業農林水産業(生産)
2次産業加工・製造
3次産業流通・販売・サービス
6次産業1×2×3=生産から販売まで一貫して行う

6次産業化の成功事例

事例取り組み内容成果
有限会社たなか(富山県)自家生産牛を使ったレトルトカレー・ジャーキー開発売上1.47億円→2.7億円(7年で約2倍)
株式会社四季菜(山梨県)トマト観光農園+直売所+加工品販売売上3,000万円→6,200万円(翌年2倍)
野口農園(栃木県)ブルーベリー摘み取り体験+ジャム販売来園者200人→1,800人(5年で9倍)
デリシャスファーム(宮城県)トマトジュース加工+カフェ併設売上1,700万円→5,500万円(15年で3倍)

農業事業者の声

「野菜を作るだけでは利益が出にくいですが、加工品にして直売所で売ることで、利益率が大幅に上がりました。6次産業化は地方農家の希望だと思います」(農業・長野県・経営者談)

「産直ECを始めてから、都市部のお客様に直接販売できるようになりました。中間マージンがないので利益が残りやすく、リピーターも増えています」(農業・熊本県・経営者談)


【4位】介護・福祉サービス業界

なぜ追い風なのか

追い風ポイント内容
高齢化の進行65歳以上人口が総人口の29%(世界最高水準)
2025年問題団塊の世代が75歳以上に突入
需要の増加要介護認定者は年々増加
政府の支援強化処遇改善加算、介護ロボット導入補助金など
地方での需要大高齢化率は地方ほど高い

高齢者人口の推移

65歳以上人口総人口比率
2020年3,619万人28.8%
2025年3,677万人30.0%(予測)
2040年3,921万人35.3%(予測)

介護業界の課題と機会

項目課題機会
人材深刻な人手不足処遇改善で待遇向上中
倒産2024年は過去最多の172件競合減少でシェア拡大の余地
テクノロジー導入が遅れている介護DXで差別化可能
需要増加し続ける安定した市場成長

介護事業で成功するポイント

ポイント内容
人材確保・定着待遇改善、働きやすい職場づくり
DX化介護ロボット、ICT活用で業務効率化
地域密着地域のニーズに合ったサービス提供
複合サービス訪問介護+デイサービスなど複数サービス展開
M&A活用後継者不足の事業所の買収

介護事業者の声

「人材確保は大変ですが、待遇改善と働きやすい環境づくりに取り組んだ結果、離職率が大幅に下がりました。介護DXにも投資して、職員の負担軽減を進めています」(介護業・愛知県・経営者談)

「高齢化が進む地方では、介護サービスへの需要は増える一方です。競合が撤退する中、しっかり経営すれば市場シェアを伸ばせるチャンスだと思います」(介護業・秋田県・経営者談)


【5位】建設・住宅リフォーム業界

なぜ追い風なのか

追い風ポイント内容
インフラ整備需要半導体工場など大型投資プロジェクト
空き家対策全国で空き家が増加、リフォーム需要
古民家再生観光施設・宿泊施設への転用需要
省エネ改修断熱リフォーム補助金など政策支援
災害対策耐震改修、防災リフォームの需要

建設業界の需要動向

分野動向
半導体関連TSMC熊本など大型投資が地方に波及
データセンター全国各地で建設ラッシュ
蓄電池工場GX関連の設備投資が活発
住宅リフォーム空き家活用、省エネ改修の需要増
公共インフラ道路・橋梁の老朽化対策

リフォーム市場の成長

リフォーム市場規模
2020年約6.5兆円
2024年約7.5兆円(推計)
2030年約8.5兆円(予測)

建設事業者の声

「半導体工場の建設ラッシュで、うちのような地方の中小建設会社にも仕事が回ってくるようになりました。人手不足が課題ですが、業績は好調です」(建設業・熊本県・経営者談)

「空き家を古民家宿泊施設にリノベーションする仕事が増えています。インバウンド向けの宿泊施設として、付加価値の高い仕事ができています」(リフォーム業・岐阜県・経営者談)


業界別・成功のポイントと参入障壁

各業界で成功するためのポイントと参入障壁をまとめます。

業界別・成功のポイント

業界成功のポイント
観光・インバウンド多言語対応、体験型コンテンツ開発、SNS活用
IT・DX支援地域密着のきめ細かい対応、補助金活用支援
農業・6次産業化差別化できる商品開発、ストーリー性、販路開拓
介護・福祉人材確保・定着、DX化、地域ニーズへの対応
建設・リフォーム技術力の維持、人材育成、大手との連携

業界別・参入障壁

業界参入障壁内容
観光・インバウンド低〜中初期投資は規模次第、ノウハウが必要
IT・DX支援技術力と営業力が必要
農業・6次産業化加工設備への投資、許認可取得
介護・福祉人材確保が困難、許認可・基準が厳格
建設・リフォーム資格・許可が必要、人材確保が課題

地方ビジネスで使える補助金・支援制度

地方の中小企業が活用できる主な補助金・支援制度をまとめます。

主な補助金一覧

補助金名対象業界補助率・上限額
IT導入補助金全業種1/2〜3/4、最大450万円
ものづくり補助金製造業など1/2〜2/3、最大1,250万円
小規模事業者持続化補助金小規模事業者2/3、最大200万円
事業再構築補助金全業種1/2〜3/4、最大1億円
インバウンド受入環境整備高度化事業観光業1/2〜定額、最大9,900万円
観光地・観光産業における人材不足対策事業宿泊業設備投資支援など
6次産業化支援補助金農林漁業者1/2、最大500万円
介護ロボット導入支援事業補助金介護事業者補助率・上限は自治体による

支援機関

支援機関内容
中小企業庁補助金情報、経営支援
よろず支援拠点無料の経営相談
商工会・商工会議所地域密着の経営支援
JETRO輸出・海外展開支援
観光庁インバウンド関連支援
農林水産省6次産業化支援

成功事例:地方で業績を伸ばした中小企業

事例1:体験型観光で売上3倍(北海道・観光業)

項目内容
業種体験型観光
所在地北海道
従業員数8名
取り組み農業体験+食体験のツアー開発
成果売上が3年で3倍に

成功のポイント

  • インバウンド向けに多言語対応を実施
  • SNS(Instagram)での情報発信を強化
  • 体験後の写真撮影サービスが口コミで拡散
  • 地元農家との連携でコンテンツを充実

事例2:産直ECで全国販売(熊本県・農業)

項目内容
業種農業(果物生産)
所在地熊本県
従業員数5名(家族経営)
取り組み産直ECサイトでの直接販売
成果売上が2年で2倍、利益率も大幅改善

成功のポイント

  • 食べチョクなどの産直ECを活用
  • 生産者のストーリーを丁寧に発信
  • リピーター向けの定期便を開始
  • 規格外品も加工品として販売

事例3:介護DXで離職率半減(愛知県・介護業)

項目内容
業種介護サービス
所在地愛知県
従業員数35名
取り組み介護ロボット・ICT導入による業務効率化
成果離職率が半減、新規採用も増加

成功のポイント

  • 介護ロボット導入補助金を活用
  • 記録業務をICT化して残業削減
  • 浮いた時間を利用者とのコミュニケーションに充当
  • 「働きやすい職場」として採用力が向上

今後の展望:地方ビジネスの未来

2025年以降の注目トレンド

トレンド内容
地方創生2.0政府が今後10年間で集中的に取り組む方針
中堅企業の成長支援地域経済を牽引する中堅・中小企業への支援強化
半導体関連の地方投資TSMC熊本を筆頭に全国で投資拡大
データセンター建設北海道、東北など冷涼な地域で建設ラッシュ
グリーントランスフォーメーション脱炭素関連ビジネスの拡大
インバウンド15兆円目標2030年に向けて地方誘客が加速

地方中小企業に求められること

求められること内容
デジタル化業務効率化とコスト削減
人材戦略採用・定着・育成の仕組みづくり
差別化地域ならではの強みを活かす
補助金活用積極的な情報収集と申請
連携地域内外の事業者との協業
事業承継早期の準備と計画的な承継

まとめ

コロナ後の地方ビジネスは、大きな変革期を迎えています。

中小企業に追い風となる業界TOP5(まとめ)

順位業界追い風の理由
1位観光・インバウンド関連訪日客過去最高、政府が地方誘客を推進
2位IT・DX支援サービスDX化が必須に、リモートで都市部の仕事も可能
3位農業・6次産業化食への関心増、EC販売で全国に販路拡大
4位介護・福祉サービス高齢化で需要増、安定した市場成長
5位建設・住宅リフォーム大型投資、空き家活用、省エネ改修需要

地方中小企業が成功するための3つのポイント

ポイント内容
地域の強みを活かす観光資源、農産物、伝統技術など
デジタルを味方につけるDX化で効率化、EC・SNSで販路拡大
支援制度を積極活用補助金、専門家相談を最大限活用

コロナ禍を経て、地方にいることがハンデではなくなった時代です。

むしろ、地方ならではの強みを活かし、デジタルを活用すれば、都市部以上の成長も可能になっています。

追い風が吹いている今こそ、地方中小企業が飛躍するチャンスです。

自社の強みと市場の追い風を見極め、次の一手を打ってみてはいかがでしょうか。

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