
「うちの社員が副業を始めたいと言っている…認めるべき?」「副業人材を活用したいけど、どう始めればいい?」
2025年現在、企業の副業容認率は60%を超え、副業は特別なことではなくなりつつあります。しかし、中小企業にとって「副業」という言葉は、まだまだ不安や疑問を伴うもの。
本記事では、中小企業が「副業OK時代」を味方につけるための人材戦略を、**「社員の副業を認める」と「副業人材を受け入れる」**の両面から徹底解説します。
目次
- 副業解禁の現状──数字で見る「副業OK時代」
- 中小企業が副業を認めるメリット・デメリット
- 副業解禁の進め方──就業規則から運用ルールまで
- 副業人材を「受け入れる」という選択肢
- 副業人材の活用パターンと契約形態
- 副業人材マッチングサービスの選び方
- 成功事例に学ぶ副業活用のポイント
- まとめ:副業時代の雇用設計チェックリスト
副業解禁の現状──数字で見る「副業OK時代」
まずは、副業をめぐる現状を数字で確認しましょう。
副業容認率の推移
| 年度 | 副業容認率 | 前回比 |
|---|---|---|
| 2018年 | 約28% | - |
| 2021年 | 約55% | +27pt |
| 2023年 | 約61% | +6pt |
| 2025年 | 約65%(推計) | +4pt |
副業を認める企業は着実に増加しています。特に2018年の厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」策定以降、大きく流れが変わりました。
業種別・副業容認率
| 業種 | 容認率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 約78% | 業界トップの容認率 |
| 情報通信業 | 約72% | リモートワークとの親和性が高い |
| 金融業・保険業 | 約65% | 近年急上昇(+21pt) |
| 製造業 | 約55% | 徐々に増加傾向 |
| 建設業 | 約48% | 業界特性から慎重 |
副業希望者 vs 実施者のギャップ
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 副業を希望している正社員 | 約41% |
| 実際に副業を行っている正社員 | 約7% |
| ギャップ | 約34pt |
注目すべきは、希望者と実施者の間に約34ポイントものギャップがあること。これは、副業を希望しても「制度がない」「認められていない」「やり方がわからない」といった障壁があることを示しています。
逆に言えば、中小企業が副業制度を整備すれば、「副業ができる会社」として求職者へのアピールポイントになる可能性があるのです。
中小企業が副業を認めるメリット・デメリット
社員の副業を認めることには、メリットとデメリットの両面があります。
メリット一覧
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 人材の確保・定着 | 副業OKは求職者にとって魅力的な条件。特に若手人材の採用・定着に効果的 |
| 社員のスキルアップ | 社外での経験が本業にも活きる。新しい視点や人脈の獲得 |
| モチベーション向上 | 自己実現の機会提供により、仕事への意欲が向上 |
| イノベーションの促進 | 社外で得た知見が新規事業や業務改善のヒントに |
| 将来の独立支援 | 起業志向の社員を応援することで、円満な関係を維持 |
デメリットと対策
| デメリット | 対策 |
|---|---|
| 本業のパフォーマンス低下 | 労働時間の上限設定、定期的な面談で状況確認 |
| 情報漏洩のリスク | 競業避止・秘密保持の規定を明確化 |
| 健康管理の難しさ | 総労働時間の把握、健康状態の確認 |
| 人材流出の懸念 | 副業内容の事前届出、コミュニケーションの強化 |
| 労働時間管理の複雑化 | 管理ツールの活用、自己申告制度の整備 |
副業容認の判断マトリクス
| 人材流出リスク:高 | 人材流出リスク:低 | |
|---|---|---|
| 採用難易度:高 | ★要検討★<br>条件付きで容認を検討 | ★積極容認★<br>採用競争力の向上につながる |
| 採用難易度:低 | △慎重に判断△<br>競業避止を重視 | ○条件付き容認○<br>社員のスキルアップ目的で |
「副業を認めたら辞められるのでは…と心配していましたが、むしろ"副業OKの会社"として採用力が上がりました。優秀な人ほど副業に興味があるんですね」(IT企業・従業員18名・経営者談)
副業解禁の進め方──就業規則から運用ルールまで
副業を認める場合、就業規則の改定と運用ルールの整備が必要です。
ステップ1:現状の就業規則を確認する
多くの企業の就業規則には「許可なく他の会社の業務に従事してはならない」という規定があります。まずはこれを確認し、副業を認める方向で改定を検討します。
ステップ2:副業の許可基準を決める
厚生労働省のガイドラインでは、以下の場合に限り副業を制限できるとされています。
| 制限可能なケース | 具体例 |
|---|---|
| 労務提供上の支障がある場合 | 過重労働で本業に支障が出る |
| 業務上の秘密が漏洩する場合 | 機密情報を扱う業務での副業 |
| 競業により自社の利益が害される場合 | 同業他社での副業 |
| 会社の名誉・信用を損なう場合 | 反社会的な活動など |
ステップ3:届出制度を整備する
副業を認める場合でも、届出制または許可制を設けることが重要です。
届出時に確認すべき項目
| 確認項目 | 確認理由 |
|---|---|
| 副業先の事業内容 | 競業チェック |
| 従事する業務内容 | 秘密保持の観点 |
| 雇用形態(雇用か業務委託か) | 労働時間通算の要否判断 |
| 所定労働時間・勤務日 | 過重労働の防止 |
| 契約期間 | 定期的な状況確認 |
ステップ4:就業規則を改定する
モデル規定例
第○条(副業・兼業)
- 社員は、勤務時間外において、会社に届け出た上で、他の会社等の業務に従事することができる。
- 社員は、前項の届出に当たっては、副業・兼業届出書により届け出なければならない。
- 会社は、社員からの届出内容を確認し、次の各号のいずれかに該当する場合は、副業・兼業を禁止または制限することがある。 (1) 労務提供上の支障がある場合 (2) 企業秘密が漏洩する場合 (3) 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 (4) 競業により、会社の利益を害する場合
ステップ5:社員への周知と運用開始
| 周知事項 | ポイント |
|---|---|
| 制度の目的 | 会社として副業を認める理由を説明 |
| 届出の方法 | 届出書のフォーマット、提出先 |
| 禁止・制限事項 | 競業避止、秘密保持の範囲 |
| 健康管理の重要性 | 過重労働の防止、自己管理の徹底 |
| 相談窓口 | 不明点があれば相談できる体制 |
労働時間管理の注意点
社員が雇用契約で副業を行う場合、本業と副業の労働時間は通算されます。
| 本業の労働時間 | 副業の労働時間 | 合計 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 8時間 | 2時間 | 10時間 | 副業先が2時間分の割増賃金を支払う義務 |
| 6時間 | 3時間 | 9時間 | 副業先が1時間分の割増賃金を支払う義務 |
| 8時間 | 業務委託 | - | 通算不要(業務委託は労基法の適用外) |
このため、業務委託形式の副業であれば労働時間の通算は不要となり、管理負担が軽減されます。
副業人材を「受け入れる」という選択肢
ここからは視点を変えて、**副業人材を「受け入れる側」**としての戦略を解説します。
なぜ中小企業こそ副業人材を活用すべきか
| 中小企業の課題 | 副業人材による解決 |
|---|---|
| 専門人材を採用できない | 大手企業の専門家を副業で活用 |
| 採用コストが高い | 必要な時だけ必要なスキルを調達 |
| フルタイム雇用の固定費負担 | 変動費として人件費をコントロール |
| 社内に新しい知見がない | 外部の視点・ノウハウを導入 |
| 正社員採用に時間がかかる | 数日〜数週間で即戦力を確保 |
副業人材受け入れの現状
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 副業人材の受け入れを行っている企業 | 約24% |
| 今後受け入れを検討している企業 | 約30% |
| 外部人材を活用したい中小企業 | 約50%以上 |
副業を「容認」している企業は60%を超える一方、副業人材を「受け入れ」ている企業は24%程度にとどまります。つまり、副業人材の受け入れ市場はまだブルーオーシャン。早期に取り組む企業ほど、優秀な副業人材を確保しやすい状況です。
副業人材の活用パターンと契約形態
副業人材の活用方法は、大きく3つのパターンに分類できます。
活用パターン比較表
| パターン | 特徴 | 期間 | 向いている業務 |
|---|---|---|---|
| タスク型 | 明確な成果物・納品物がある | 数日〜数週間 | ロゴデザイン、記事作成、データ入力、翻訳 |
| プロジェクト型 | 中長期のプロジェクトに参画 | 数ヶ月〜1年 | システム開発、新商品マーケティング、ECサイト構築 |
| ミッション型 | 継続的に経営課題に関与 | 半年〜継続 | 経営戦略立案、人材育成、ブランディング |
契約形態の選択
| 契約形態 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 業務委託契約 | 労働時間管理不要、社会保険加入不要 | 指揮命令ができない | 成果物が明確な業務 |
| 雇用契約(パート) | 指揮命令が可能 | 労働時間通算、社会保険の可能性 | 定常的なサポート業務 |
中小企業が副業人材を受け入れる場合、業務委託契約が一般的です。雇用契約の場合は労働時間の通算管理が必要となり、管理負担が大きくなります。
副業人材に依頼しやすい業務
| 業務分野 | 具体的な業務例 | 期待効果 |
|---|---|---|
| マーケティング | SNS運用、広告運用、SEO対策、PR戦略 | 専門知識の即時活用 |
| IT・デジタル | Webサイト制作、システム開発、データ分析 | 技術力の補完 |
| デザイン | ロゴ、パンフレット、動画制作 | クリエイティブの質向上 |
| 営業・販促 | 営業戦略立案、販路開拓、商談代行 | 売上向上への直接貢献 |
| 人事・採用 | 採用戦略、面接支援、研修設計 | 採用力の強化 |
| 経営・財務 | 事業計画策定、資金調達支援、経営相談 | 経営判断の質向上 |
「採用がうまくいかず悩んでいたところ、副業で人事のプロに相談。合同企業説明会での対応方法を具体的にアドバイスしてもらい、ブース訪問者が大幅に増えました」(設備工事業・従業員45名・総務担当談)
副業人材マッチングサービスの選び方
副業人材を探す方法として、マッチングサービスの活用が効率的です。
主なサービスタイプ
| タイプ | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| プラットフォーム型 | 企業と副業人材が直接マッチング | 手数料が低い、スピードが早い | 人材選定は自社で行う必要あり |
| エージェント型 | 担当者が最適な人材を提案 | プロの目利きで人材を選定 | 手数料が比較的高い |
| ハイブリッド型 | プラットフォーム+サポート | バランスが良い | サービスにより差がある |
料金体系の比較
| 料金体系 | 仕組み | 向いているケース |
|---|---|---|
| 成功報酬型 | マッチング成立時に手数料発生 | 初めて副業人材を活用する企業 |
| 定額型 | 月額固定で利用し放題 | 継続的に複数人材を活用する企業 |
| 時間単価型 | 稼働時間×単価で報酬決定 | 稼働量を柔軟に調整したい企業 |
マッチングサービス選びのチェックリスト
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| □ 登録人材の専門分野 | 自社が求めるスキルを持つ人材がいるか |
| □ 料金体系 | 予算に合った料金プランか |
| □ サポート体制 | 契約書作成や面談調整のサポートがあるか |
| □ 最低契約期間 | 短期間から試せるか |
| □ 契約形態 | 業務委託か雇用か、選択できるか |
| □ トラブル対応 | 問題発生時のサポート体制 |
費用相場の目安
| 職種・スキル | 時間単価の目安 | 月額換算(週10時間の場合) |
|---|---|---|
| 一般事務・アシスタント | 1,500〜3,000円 | 6〜12万円 |
| Webデザイナー | 3,000〜6,000円 | 12〜24万円 |
| エンジニア | 4,000〜10,000円 | 16〜40万円 |
| マーケター | 4,000〜8,000円 | 16〜32万円 |
| 経営コンサルタント | 8,000〜20,000円 | 32〜80万円 |
正社員を1人採用するコスト(採用費+年収)と比較すると、必要な時だけ必要なスキルを調達できる副業人材の活用は、コストパフォーマンスに優れています。
成功事例に学ぶ副業活用のポイント
実際に副業人材を活用して成果を上げた中小企業の事例を紹介します。
事例A:ECサイト立ち上げ(製造業・従業員28名)
課題
- BtoB中心だったが、BtoC市場への参入を検討
- 社内にEC・Webマーケティングの知見がない
- フルタイムのWeb担当者を雇う余裕がない
取り組み
- 副業マッチングサービスでECサイト構築経験者を採用
- 週10時間程度の稼働で、3ヶ月でサイトをオープン
- 運用開始後も月10時間程度でマーケティング支援を継続
結果
| 指標 | Before | After |
|---|---|---|
| EC売上 | 0円 | 月間50万円 |
| 新規顧客獲得 | BtoBのみ | 個人顧客200名超 |
| 投資コスト | - | 月額約15万円 |
「正社員を雇っていたら年間400万円以上かかるところ、月15万円で専門家の力を借りられた。費用対効果は抜群でした」(社長談)
事例B:採用力強化(サービス業・従業員15名)
課題
- 求人を出しても応募がほとんどない
- 採用活動のノウハウが社内にない
- 採用担当者を置く余裕がない
取り組み
- 人事経験者の副業人材を週5時間で採用
- 求人票の改善、SNS採用の立ち上げを支援
- 面接同席や採用基準の策定もサポート
結果
| 指標 | Before | After |
|---|---|---|
| 月間応募数 | 1〜2件 | 8〜10件 |
| 採用成功率 | 10% | 40% |
| 採用単価 | 80万円/人 | 25万円/人 |
「プロの視点で求人票を見直してもらったら、応募の質が変わりました。"この会社で働きたい"という志望動機を持った人が増えた」(人事担当談)
事例C:経営戦略の策定(卸売業・従業員22名)
課題
- 事業承継を控え、中長期の経営計画が必要
- 社内に経営企画の経験者がいない
- コンサルティング会社に依頼する予算がない
取り組み
- 大手企業の経営企画部門出身者を副業で採用
- 月2回のミーティング+リモートでのサポート
- 6ヶ月かけて中期経営計画を策定
結果
| 指標 | 効果 |
|---|---|
| 策定コスト | コンサルティング会社の1/3以下 |
| 計画の質 | 金融機関から高評価、融資条件が改善 |
| 副次効果 | 社内メンバーの経営意識が向上 |
「大手コンサルに頼むと数百万円。副業人材なら月10万円程度で、同等以上のアウトプットが得られました」(経営者談)
副業人材を受け入れる際の注意点
副業人材の活用にはメリットが多い一方、注意すべき点もあります。
受け入れ時の注意点チェックリスト
| 注意点 | 対策 |
|---|---|
| 稼働時間の制限 | 本業があるため、緊急対応が難しい場合も。余裕を持ったスケジュールで |
| コミュニケーション不足 | 定期的なミーティング、チャットツールの活用 |
| 情報セキュリティ | 秘密保持契約の締結、アクセス権限の管理 |
| 成果物の権利関係 | 著作権等の帰属を契約書で明確化 |
| 社内の理解 | 「外部の人に任せる」ことへの抵抗感を解消 |
副業人材との良好な関係構築のコツ
| ポイント | 具体的なアクション |
|---|---|
| 目的・ゴールの共有 | 何を達成したいのかを明確に伝える |
| 期待値のすり合わせ | 成果物のイメージ、品質基準を事前に確認 |
| 適切な情報提供 | 業務に必要な情報は惜しみなく共有 |
| フィードバックの実施 | 良い点・改善点を具体的に伝える |
| 感謝の気持ちを伝える | チームの一員として尊重する姿勢 |
まとめ:副業時代の雇用設計チェックリスト
「副業OK時代」を味方につけるために、以下のチェックリストで自社の状況を確認しましょう。
社員の副業を認める場合のチェックリスト
| カテゴリ | チェック項目 | 対応状況 |
|---|---|---|
| 制度設計 | □ 就業規則に副業規定があるか | ○ / × |
| □ 届出制度・許可制度が整備されているか | ○ / × | |
| □ 禁止・制限事項が明確か | ○ / × | |
| 運用体制 | □ 届出書のフォーマットがあるか | ○ / × |
| □ 労働時間管理の方法が決まっているか | ○ / × | |
| □ 相談窓口が設置されているか | ○ / × | |
| 周知・教育 | □ 社員への周知が完了しているか | ○ / × |
| □ 管理職への教育が行われているか | ○ / × |
副業人材を受け入れる場合のチェックリスト
| カテゴリ | チェック項目 | 対応状況 |
|---|---|---|
| 準備段階 | □ 依頼したい業務が明確か | ○ / × |
| □ 求める人材像が具体的か | ○ / × | |
| □ 予算・期間が決まっているか | ○ / × | |
| 契約・管理 | □ 契約形態(業務委託/雇用)を決めたか | ○ / × |
| □ 秘密保持契約の準備ができているか | ○ / × | |
| □ 成果物の権利関係を確認したか | ○ / × | |
| 社内体制 | □ 担当者・窓口が決まっているか | ○ / × |
| □ コミュニケーションツールが整備されているか | ○ / × | |
| □ 社内メンバーへの説明が完了しているか | ○ / × |
今日からできるアクションプラン
すぐにできること(1週間以内)
- 自社の就業規則における副業規定を確認する
- 副業人材マッチングサービスに資料請求する
- 社内で副業ニーズをヒアリングする
1ヶ月以内に取り組むこと
- 副業規定の改定案を作成する
- 副業人材に依頼したい業務をリストアップする
- マッチングサービスに登録し、候補人材を探す
3ヶ月以内に取り組むこと
- 就業規則の改定と届出を完了する
- 副業人材を試験的に1名採用する
- 運用しながらルールを改善する
最後に
「副業OK時代」は、中小企業にとってピンチではなくチャンスです。
社員の副業を認めることで採用力が向上し、副業人材を受け入れることで専門スキルを低コストで活用できる。この両面を活かした「新しい雇用設計」こそが、人手不足時代を生き抜くカギとなります。
まずは小さな一歩から。今日から「副業OK時代の人材戦略」を始めてみませんか?








