社長が現場を離れられない会社が成長しにくい理由

はじめに:忙しすぎる社長ほど、会社は伸び悩む

今日は、多くの中小企業の経営者さんが抱える悩みについてお話ししたいと思います。

「毎日忙しすぎて、経営のことを考える時間がない」

「自分がいないと現場が回らない」

「休みを取ると、仕事が溜まって余計に大変になる」

こんな状態、心当たりはありませんか?

実はこれ、多くの中小企業の社長さんが陥りがちな状況なんです。そして残念ながら、この状態が続く限り、会社の成長には限界があると言わざるを得ません。

「いやいや、自分が頑張っているから会社が回っているんだ」

そう思う気持ちはよくわかります。でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

今回は、社長が現場を離れられない会社がなぜ成長しにくいのか、そしてどうすればその状況を変えられるのか、データと事例を交えながらじっくりお伝えしていきますね。


データで見る:現場密着型社長の実態

中小企業の社長の働き方調査

まず、中小企業の社長さんがどのくらい現場に関わっているのか、データを見てみましょう。

社長の現場関与度該当企業の割合
自分がいないと現場が回らない62%
毎日の業務に直接関わっている71%
経営に使える時間は1日1時間未満58%
休日も仕事のことが頭から離れない78%
1週間以上の休暇を取ったことがない65%

これ、驚くべき数字じゃないですか?

6割以上の社長さんが「自分がいないと現場が回らない」と感じているんです。

社長の労働時間の内訳

では、社長さんの1日の時間はどう使われているのでしょうか。

業務内容平均時間/日理想時間/日ギャップ
現場作業・実務4.2時間1.0時間+3.2時間
顧客対応2.1時間1.5時間+0.6時間
社内会議・打ち合わせ1.8時間1.0時間+0.8時間
経営戦略・計画0.8時間2.5時間-1.7時間
人材育成0.5時間1.5時間-1.0時間
新規事業・イノベーション0.3時間1.5時間-1.2時間
自己研鑽・学習0.2時間1.0時間-0.8時間

見てください、このギャップ。

本来、経営者として最も時間を使うべき「経営戦略」「人材育成」「新規事業」に、ほとんど時間が使えていないんです。

代わりに、現場作業に1日4時間以上も費やしている。これでは、会社を成長させる時間がありませんよね。


なぜ社長は現場を離れられないのか

現場密着になる5つの理由

社長さんが現場を離れられない理由は、大きく5つあります。

理由該当率社長の本音
自分がやった方が早い・確実82%「任せると二度手間になる」
任せられる人材がいない75%「できる人がいない」
品質が心配68%「自分じゃないと品質が保てない」
お客様が自分を指名する55%「社長に対応してほしいと言われる」
任せ方がわからない48%「どうやって教えればいいかわからない」

どれか一つでも心当たりがあるんじゃないでしょうか。

特に「自分がやった方が早い」という理由、これが一番厄介なんです。

確かに、今この瞬間だけを見れば、社長がやった方が早いかもしれません。でも、それを続ける限り、社員は成長せず、社長は忙しいままという構造は変わりません。

「任せられない」の悪循環

ちょっと図で整理してみましょう。

ステップ状況
1社長が「自分でやった方が早い」と判断
2社員に仕事を任せない
3社員が経験を積めない
4社員のスキルが上がらない
5ますます「任せられない」と感じる
6社長がさらに忙しくなる
7経営に使える時間がさらに減る
8会社の成長が止まる

これ、完全な悪循環なんですよね。

今、勇気を持って任せなければ、この循環から抜け出すことはできないんです。


現場から離れられないと、会社はどうなるか

成長の天井にぶつかる

現場密着型の経営を続けると、必ず「成長の天井」にぶつかります。

社長の現場関与度平均売上成長率/年5年生存率
ほぼ現場にいる2.3%68%
半々程度5.8%78%
経営に専念11.2%89%

データを見てください。

社長が経営に専念している会社は、現場にいる会社と比べて、売上成長率が約5倍も違うんです。

これは偶然じゃありません。明確な理由があります。

成長が止まる5つの理由

理由説明
経営判断の遅れ日常業務に追われて、重要な判断が後回しになる
機会損失新しいチャンス(取引先、市場、事業)を見つける時間がない
人材が育たない社長がやってしまうから、社員が成長しない
組織の限界社長一人で見れる範囲が会社の限界になる
社長の疲弊体力・気力が持たず、パフォーマンスが低下する

特に「組織の限界」は見落としがちなポイントです。

考えてみてください。社長一人が目を配れる社員は、せいぜい10〜15人程度。それ以上になると、物理的に見れなくなります。

つまり、社長が現場にいる限り、会社は「社長の目が届く範囲」以上には成長できないんです。

社長の健康リスク

もう一つ、見逃せない問題があります。それは、社長自身の健康です。

健康問題現場密着型社長経営専念型社長
慢性的な疲労を感じている78%42%
睡眠時間6時間未満62%31%
健康診断で要再検査45%28%
ストレスで体調を崩した経験58%32%
休日もリフレッシュできない72%35%

これは深刻な問題ですよね。

社長が倒れたら、会社はどうなりますか?

「自分がいないと回らない会社」で社長が倒れたら、文字通り会社が止まってしまいます。これは、会社にとっても、社員にとっても、取引先にとっても、大きなリスクなんです。


現場を離れた社長の会社は、こう変わった

ここで、実際に現場を離れることに成功した社長さんの事例をご紹介しますね。

事例1:製造業(従業員15名)

社長の変化

項目以前現在
現場作業時間1日6時間1日1時間(確認程度)
経営に使う時間1日1時間1日4時間
休日出勤月4回月0回
年間休暇5日20日

会社の変化

指標以前2年後変化
売上1.8億円2.8億円+56%
営業利益率3%8%+5pt
従業員数15名22名+7名
離職率20%8%-12pt

社長の声

「正直、最初は怖かったです。『自分がいなくて大丈夫か』と何度も不安になりました。でも、任せてみたら、社員が思った以上に頑張ってくれた。むしろ、自分がいない方がうまく回ることもあると気づきました。今は経営に集中できて、新規事業も始められています」

事例2:サービス業(従業員8名)

社長の変化

項目以前現在
顧客対応全件自分で対応重要案件のみ
現場作業毎日フル稼働週2回のチェックのみ
経営時間ほぼゼロ1日3時間
睡眠時間5時間7時間

会社の変化

指標以前1年半後変化
月商500万円850万円+70%
新規顧客数月3件月8件+167%
顧客満足度72点85点+13点
社員満足度58点81点+23点

社長の声

「『社長にお願いしたい』と言うお客様を、社員に引き継ぐのは勇気がいりました。でも、しっかり引き継ぎをしたら、お客様も納得してくれた。むしろ『チームで対応してくれて安心』と言ってもらえることも増えました」

事例3:建設業(従業員25名)

社長の変化

項目以前現在
現場監督全現場を自分で確認月1回の巡回のみ
見積作成全件自分で作成大型案件のみ
会議全会議に出席経営会議のみ
出張年2回年12回(視察・学習)

会社の変化

指標以前3年後変化
売上5億円9億円+80%
受注単価2,000万円3,500万円+75%
管理職1名4名+3名
社長の年収1,200万円2,500万円+108%

社長の声

「昔は『俺がいないと現場が回らない』が自慢でした。でも、それって結局、人を育てられていないってことだと気づいたんです。今は、自分がいなくても回る組織を作れたことが誇りです」


現場を離れるための5つのステップ

さて、ここからは具体的な方法をお伝えしますね。現場を離れるのは一朝一夕にはいきませんが、正しいステップを踏めば必ずできます。

ステップ1:自分の仕事を「見える化」する

まず、社長自身が何にどれだけ時間を使っているかを把握しましょう。

やること方法
1週間の業務を記録する15分単位で何をしたかメモ
カテゴリー分けする現場作業/顧客対応/管理業務/経営/その他
時間を集計するカテゴリーごとの時間を算出
理想との差を確認する本来使いたい時間との差を把握

多くの社長さんが、この作業をして驚きます。

「こんなに現場作業に時間を使っていたのか」と。

まずは現実を直視することが第一歩です。

ステップ2:「任せる業務」を決める

すべてを一度に任せようとすると失敗します。まずは優先順位をつけましょう。

優先度任せるべき業務理由
定型業務・ルーティンマニュアル化しやすい
社長でなくてもできる業務代替可能性が高い
社長の得意でない業務他の人の方がうまくできる可能性
経営判断に直結する業務最後まで社長がやるべき
重要顧客との関係構築信頼関係が重要

業務の振り分けマトリクス

緊急緊急でない
重要優先対応(社長がやる)計画的に(社長がやる)
重要でない任せる or やめる任せる or やめる

「重要でない」業務は、思い切って任せるか、そもそもやめてしまいましょう。

ステップ3:任せる相手を育てる

業務を任せるためには、任せられる人材が必要です。

育成のステップ内容期間目安
1. 見せる社長のやり方を見せる1〜2週間
2. やらせる(横で見る)一緒にやりながら教える2〜4週間
3. やらせる(確認する)任せて、結果を確認1〜2ヶ月
4. 任せる完全に任せる

ここでのポイントは、「70%できたらOK」と割り切ることです。

最初から100%を求めると、いつまでも任せられません。70%できれば、残りは経験を積む中で身についていきます。

ステップ4:仕組み化する

人に依存しない仕組みを作ることも重要です。

仕組み化すべき項目方法
業務プロセスマニュアル作成、チェックリスト
判断基準「こういう場合はこうする」のルール化
報告・連絡定期報告の仕組み、報告フォーマット
品質管理チェック体制、基準の明確化
顧客対応対応フロー、FAQ、トークスクリプト

仕組み化の良いところは、社長がいなくても一定の品質を保てることです。

ステップ5:少しずつ離れる

一気に離れようとすると、社長も社員も不安になります。段階的に進めましょう。

段階社長の関わり方期間目安
第1段階全部自分でやる(現状)
第2段階やりながら教える1〜2ヶ月
第3段階横で見ながら任せる1〜2ヶ月
第4段階定期的に確認する2〜3ヶ月
第5段階報告を受けるだけ継続

焦らず、一つずつ進めていけば大丈夫です。


現場を離れた社長が使う時間

現場を離れた社長さんは、空いた時間を何に使っているのでしょうか。

経営に使える時間の使い方

使い方優先度効果
経営戦略・計画策定★★★★★会社の方向性を決める
人材育成・組織づくり★★★★★持続的な成長の基盤
新規事業・イノベーション★★★★☆将来の収益源を作る
外部とのネットワーキング★★★★☆新しい機会を得る
自己研鑽・学習★★★★☆経営者としてのレベルアップ
重要顧客との関係構築★★★★☆大型案件・長期関係
採用活動★★★★☆優秀な人材の確保

経営者が本来やるべき仕事

仕事説明
ビジョンを描く会社の未来像を考え、伝える
戦略を立てるどうやって目標を達成するか考える
人を育てる次世代のリーダーを育成する
文化を作る会社の価値観・風土を醸成する
決断する重要な判断を下す
外を見る市場・競合・技術のトレンドを把握する
代表として動く対外的な関係構築、発信

これらは、社長にしかできない仕事です。

現場作業に追われていると、これらの仕事ができません。でも、これこそが会社を成長させる仕事なんです。


よくある不安と、その解消法

現場を離れることに対して、多くの社長さんが不安を感じます。よくある不安と、その解消法をお伝えしますね。

不安1:品質が落ちるのでは?

不安解消法
自分じゃないと品質が保てないチェック体制を作る、基準を明確にする
細かいところに目が行き届かない定期的な確認の仕組みを作る
お客様に迷惑がかかる引き継ぎを丁寧に行う、フォロー体制を整える

実際に経験した社長の声

「最初は品質低下を心配しました。でも、チェックリストを作って基準を明確にしたら、むしろ品質が安定した。自分の感覚に頼っていた部分が標準化されたんです」

不安2:社員に任せて大丈夫か?

不安解消法
社員のスキルが心配段階的に任せる、育成に時間をかける
責任感が心配責任と権限をセットで渡す
判断を間違えそう判断基準を明確にする、相談しやすい環境を作る

実際に経験した社長の声

「任せる前は『この社員には無理だ』と思っていました。でも、任せてみたら予想以上にできた。自分が手を出しすぎていたから、成長する機会を奪っていたんですね」

不安3:自分の存在価値がなくなるのでは?

不安解消法
自分がいなくても回ると寂しい社長にしかできない仕事に集中する
存在意義がなくなる気がする「現場で働く」から「会社を成長させる」に役割を変える
暇になって何をすればいいかわからない経営者としてやるべきことを明確にする

実際に経験した社長の声

「最初は暇になって戸惑いました。でも、経営に集中し始めたら、やることは山ほどあった。むしろ、今まで見えていなかったことがたくさん見えるようになりました」


現場を離れられない社長へのメッセージ

最後に、現場を離れられずに悩んでいる社長さんへ、お伝えしたいことがあります。

「自分でやる」は責任感ではない

「自分でやる」ことが責任感だと思っていませんか?

でも、本当の責任感は、**「会社を持続的に成長させること」**ではないでしょうか。

社長一人に依存した会社は、社長が倒れたら終わりです。それは、社員にとっても、取引先にとっても、無責任なことかもしれません。

任せることは「楽をすること」ではない

任せることを「楽をすること」「サボること」だと感じる社長さんもいます。

でも、任せることは楽をすることではありません。もっと重要な仕事に集中することです。

現場作業は、社員でもできます。でも、会社の未来を考え、戦略を立て、人を育てることは、社長にしかできません。

今日からできる第一歩

大きな変化は、小さな一歩から始まります。

今日からできること所要時間
1週間の業務を記録してみる毎日5分
「これは任せられるかも」という業務を1つ見つける30分
一つの業務について、社員に教え始める1時間
自分がいない時間を意識的に作ってみる1時間
経営について考える時間をスケジュールに入れる15分

まずは、小さなことから始めてみてください。


まとめ:社長の役割は「現場で働くこと」ではない

長くなりましたが、最後にまとめさせてください。

社長が現場を離れられないと起きること

問題
会社の成長に天井ができる
経営判断に使う時間がなくなる
社員が育たない
社長が疲弊する
会社が社長に依存するリスクが高まる

現場を離れるための5つのステップ

ステップ
1. 自分の仕事を「見える化」する
2. 「任せる業務」を決める
3. 任せる相手を育てる
4. 仕組み化する
5. 少しずつ離れる

社長の本当の仕事

本当の仕事
ビジョンを描き、戦略を立てる
人を育て、組織を作る
新しい機会を見つけ、挑戦する
重要な判断を下す
会社の代表として外部と関わる

おわりに:あなたの会社の未来のために

社長が現場を離れられない会社は、社長の限界が会社の限界になります。

でも、社長が経営に専念できる会社は、社長の成長とともに会社も成長します。

あなたの会社の未来のために、少しずつでも「現場を離れる」準備を始めてみませんか?

最初は不安かもしれません。でも、一歩踏み出した社長さんは皆、口を揃えてこう言います。

**「もっと早くやればよかった」**と。

あなたの会社の成長を、心から応援しています。

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