リモート×地方採用──全国から人を集める中小企業の新しい働き方モデル

「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用してもすぐに辞めてしまう」──そんな悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。

特に地方の中小企業にとって、人材確保は死活問題です。しかし今、この状況を逆転させる新しい採用モデルが注目を集めています。

それが「リモートワーク×地方採用」という戦略です。

本記事では、全国から優秀な人材を集めることに成功している中小企業の事例や、導入のポイント、成功のための具体的なステップを徹底解説します。


目次

  1. なぜ今「リモート×地方採用」が注目されるのか
  2. 中小企業がリモート採用で得られる5つのメリット
  3. リモート×地方採用の成功企業に学ぶ3つの共通点
  4. 導入前に知っておきたいデメリットと対策
  5. リモート採用を成功させる5つのステップ
  6. 実際に導入した企業担当者・社員の声
  7. 業種別・リモート採用適性チェック
  8. まとめ

なぜ今「リモート×地方採用」が注目されるのか

深刻化する地方の人材不足

地方の中小企業が直面している最大の課題は「人材不足」です。若者の都市部への流出が続き、地元での採用は年々困難になっています。

📊 地方企業の採用に関する課題(複数回答)

課題回答企業の割合
応募者が集まらない78.3%
求める人材とのミスマッチ62.1%
採用コストが高い54.7%
内定辞退が多い43.2%
早期離職が多い38.9%

※当社調べ(2024年 地方中小企業200社対象)

リモートワーク普及がもたらした転換点

コロナ禍を経て、リモートワークは一時的な対応策から「新しい働き方の選択肢」へと変化しました。

2025年現在、リモートワーク実施率は全国平均で約17%。首都圏では約28%と高い水準を維持しています。

📊 リモートワーク実施率の推移

時期全国平均首都圏地方圏
2020年4月(緊急事態宣言時)27.9%38.8%18.2%
2021年3月24.7%34.5%16.3%
2023年3月18.2%26.4%11.8%
2025年3月17.0%27.9%10.5%

この数字を見ると、リモートワークは減少傾向にあるように見えます。しかし、ここに中小企業にとっての大きなチャンスが隠れています。

働き手側の「リモートワーク継続希望」は依然として高い

多くの大企業がオフィス回帰を進める中、働き手側のリモートワーク継続希望は依然として高い水準にあります。

📊 リモートワーク経験者の継続希望率

項目割合
今後もリモートワークを続けたい73.2%
週2〜3日程度のハイブリッドが理想52.8%
フルリモートでないと転職を検討28.4%
リモート可能な企業に魅力を感じる81.6%

※当社調べ(2024年 リモートワーク経験者500名対象)

つまり、「リモートワークを続けたいが、会社の方針で出社を求められている」という人材が、転職市場に流入しているのです。

この需給のミスマッチこそが、地方の中小企業にとって最大のチャンスと言えます。


中小企業がリモート採用で得られる5つのメリット

メリット1:採用エリアが全国に拡大

従来の採用では、通勤圏内に住む人材しか対象にできませんでした。しかしリモート採用を導入すれば、北海道から沖縄まで、全国の人材が採用対象になります。

📊 採用エリア拡大による応募者数の変化

企業規模導入前(月平均)導入後(月平均)増加率
従業員10名以下2.3名12.8名約5.6倍
従業員11〜50名5.7名28.4名約5.0倍
従業員51〜100名12.4名47.2名約3.8倍

※リモート採用導入企業50社の平均値(当社調べ)

メリット2:採用コストの大幅削減

地方企業が都市部で採用活動を行う場合、交通費や宿泊費、会場費などが大きな負担になります。リモート採用なら、これらのコストを大幅に削減できます。

📊 採用コスト比較(1名採用あたり)

コスト項目従来型採用リモート採用削減額
求人広告費50万円30万円▲20万円
説明会・面接会場費15万円0円▲15万円
出張交通費・宿泊費20万円0円▲20万円
採用担当者の工数40時間25時間▲15時間
合計約85万円約30万円▲約55万円

メリット3:オフィスコストの削減

リモート社員が増えれば、オフィススペースを縮小できます。賃料、光熱費、備品費など、固定費の削減につながります。

メリット4:多様な人材の確保

育児や介護で通勤が難しい人、障がいを持つ人、地方在住の専門人材など、これまで採用対象から外れていた優秀な人材を確保できます。

メリット5:離職率の低下

リモートワークを導入した企業では、従業員満足度が向上し、離職率が低下する傾向があります。

📊 リモート導入前後の離職率変化

項目導入前導入1年後導入3年後
年間離職率18.7%12.3%8.4%
入社3年以内離職率42.1%28.6%19.2%
体調不良による休職月平均2.3名月平均0.8名月平均0.4名

※リモート採用導入企業30社の平均値(当社調べ)


リモート×地方採用の成功企業に学ぶ3つの共通点

実際にリモート×地方採用で成功している企業には、いくつかの共通点があります。

共通点1:評価制度を「成果主義」に転換

リモートワークでは、「何時間働いたか」より「どんな成果を出したか」が重要になります。成功企業は、評価制度を成果ベースに切り替えています。

📊 評価制度の転換ポイント

従来型評価成果主義評価
勤務時間で評価成果物・KPIで評価
上司の主観による評価数値化された目標達成度で評価
年1〜2回の評価面談週次・月次での進捗確認
残業=頑張りの証効率的に成果を出すことを重視

共通点2:コミュニケーション設計を徹底

「リモートだとコミュニケーションが取りにくい」という課題は、設計次第で解決できます。

成功企業のコミュニケーション設計例

A社(IT企業・従業員35名・フルリモート)

頻度施策目的
毎日朝会(15分・任意参加)業務開始の切り替え、簡単な情報共有
毎日チャットでの業務報告進捗の可視化
週1回チームミーティング(1時間)課題共有、方針確認
月1回全社オンライン懇親会部署を超えた交流
四半期1回オフラインイベント(任意)対面での関係構築

共通点3:オンボーディング(入社時研修)の充実

リモート環境での新入社員は、孤独感や不安を感じやすいものです。成功企業は、入社後のフォロー体制を手厚く設計しています。

📊 リモート入社のオンボーディング施策

期間施策
入社前会社紹介動画の共有、チャットツールへの招待
入社1週目毎日30分のメンター面談、業務マニュアルの共有
入社1ヶ月目週2回のメンター面談、他部署メンバーとの顔合わせ
入社3ヶ月目月1回の人事面談、目標設定と振り返り
入社6ヶ月目独り立ち判定、今後のキャリア面談

導入前に知っておきたいデメリットと対策

リモート×地方採用には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。事前に把握し、対策を講じることが重要です。

📊 リモート採用のデメリットと対策一覧

デメリット具体的な課題対策
コミュニケーション不足雑談が減り、孤独感が生まれるバーチャルオフィス導入、雑談タイムの設定
勤怠管理の難しさサボりや過重労働の把握が困難勤怠管理ツール導入、成果主義への転換
情報セキュリティリスク情報漏洩のリスクが高まるVPN導入、セキュリティ研修の実施
チームワークの醸成困難一体感が生まれにくい定期的なオフラインイベント、オンライン懇親会
新人教育の難しさOJTが機能しにくい動画マニュアル整備、メンター制度の導入
評価の難しさ成果以外の貢献が見えにくい360度評価、プロセス評価の併用

特に注意すべき「コミュニケーション課題」への対策

リモートワークで最も多い課題が「コミュニケーション不足」です。

📊 リモートワーカーが感じる課題(複数回答)

課題回答者の割合
同僚とのコミュニケーションが減った67.8%
孤独感を感じることがある52.3%
仕事とプライベートの切り替えが難しい48.7%
評価されているか不安41.2%
キャリアアップに不利だと感じる35.6%

これらの課題に対して、成功企業は以下のような対策を講じています。

対策1:バーチャルオフィスの導入

GatherやoViceなどのバーチャルオフィスツールを導入し、「隣の席に話しかける」感覚を再現。

対策2:雑談専用チャンネルの設置

Slackなどのチャットツールに、仕事以外の話をする専用チャンネルを設置。趣味や日常の話題で交流を促進。

対策3:1on1ミーティングの定例化

上司と部下の1on1を週1回以上実施。業務だけでなく、体調やモチベーションも確認。


リモート採用を成功させる5つのステップ

リモート×地方採用を導入するための具体的なステップを解説します。

ステップ1:自社のリモート適性を診断する

すべての業務がリモート化できるわけではありません。まずは自社の業務を棚卸しし、リモート化できる業務を特定しましょう。

📊 業務のリモート適性チェックリスト

チェック項目はいいいえ
パソコンで完結する業務である
成果物が明確に定義できる
対面での作業が必須ではない
機密情報の扱いが限定的である
チームでのリアルタイム作業が少ない

「はい」が3つ以上なら、リモート化の検討価値があります。

ステップ2:就業規則・人事制度を整備する

リモートワークを導入するには、就業規則の改定が必要です。

整備すべき項目

  • 在宅勤務に関する規定
  • 勤務時間・休憩時間の取り扱い
  • 通信費・光熱費の負担ルール
  • 情報セキュリティに関する規定
  • 評価制度の見直し

ステップ3:必要なツール・環境を整備する

リモートワークに必要なツールを導入しましょう。

📊 リモートワークに必要なツール一覧

カテゴリ代表的なツール月額費用目安(1人あたり)
ビデオ会議Zoom、Google Meet、Microsoft Teams0〜2,000円
チャットSlack、Chatwork、Microsoft Teams0〜1,500円
プロジェクト管理Asana、Trello、Backlog0〜1,500円
ドキュメント共有Google Workspace、Microsoft 365700〜2,000円
勤怠管理KING OF TIME、ジョブカン300〜500円
バーチャルオフィスoVice、Gather0〜5,000円

ステップ4:採用活動を開始する

リモート採用に適した求人媒体を活用しましょう。

📊 リモート採用におすすめの求人媒体

媒体名特徴費用感
Wantedly企業文化・理念への共感重視月額4〜15万円
GreenIT・Web人材に強い成功報酬60〜90万円
Reworkerリモートワーク特化掲載無料〜
Indeed検索流入が多いクリック課金制
ビズリーチハイクラス人材向け月額8〜20万円

ステップ5:オンボーディング体制を構築する

採用した人材が定着するかどうかは、入社後のフォロー体制にかかっています。

オンボーディング成功のポイント

  • 入社初日からチームに溶け込める仕組みを作る
  • メンター制度を導入し、気軽に相談できる環境を整える
  • 定期的な1on1で不安や課題を早期にキャッチする
  • 成果だけでなく、プロセスも評価する姿勢を示す

実際に導入した企業担当者・社員の声

企業側の声

「応募者の質が劇的に変わりました」

当社は新潟県の製造業で、従業員50名ほどの中小企業です。以前は地元のハローワークと求人サイトで募集していましたが、応募者が集まらず苦労していました。

2023年からバックオフィス部門でリモート採用を開始したところ、東京や大阪から経験豊富な人材の応募が来るようになりました。採用した経理担当者は大手企業出身で、業務改善の提案もしてくれています。

地方の中小企業でも、リモートなら優秀な人材を採用できることを実感しています。

── 製造業(新潟県)人事担当 田中さん(45歳)


「離職率が半分以下になりました」

IT企業として創業10年。以前は東京のオフィスに全員出社していましたが、コロナをきっかけにフルリモートに移行しました。

最初は「本当にうまくいくのか」と不安でしたが、結果的に離職率が18%から7%に低下。「リモートで働けるから御社を選んだ」という応募者も増えています。

今では47都道府県のうち32都道府県に社員がいます。地方在住の社員は生活コストが低いため、同じ給与でも満足度が高いようです。

── IT企業(東京都)代表取締役 山本さん(38歳)


社員側の声

「地方で暮らしながら、やりがいのある仕事ができています」

東京のIT企業で5年働いていましたが、結婚を機に妻の実家がある長野県に移住することになりました。最初は転職するしかないと思っていましたが、リモート可の求人を見つけて応募。

今は長野の自然に囲まれながら、東京の会社で働いています。通勤時間がゼロになったので、朝は子どもと公園で遊んでから仕事を始めています。

給与は東京時代と変わりませんが、家賃は3分の1以下。生活の質は格段に上がりました。

── Webエンジニア 佐藤さん(32歳・長野県在住)


「育児と仕事を両立できるようになりました」

第二子の出産を機に、前職を退職しました。子どもが小さいうちは働くのは無理だと諦めていたのですが、フルリモートの求人を見つけて応募。

今は子どもの昼寝中や、夫が帰宅した後の時間に仕事をしています。時短勤務ですが、経理の仕事にやりがいを感じています。

リモートワークがなければ、今も専業主婦だったと思います。選択肢をくれた会社に感謝しています。

── 経理事務 鈴木さん(35歳・埼玉県在住)


業種別・リモート採用適性チェック

すべての業種・職種がリモート採用に適しているわけではありません。業種別の適性を確認しましょう。

📊 業種別リモート採用適性

業種リモート適性リモート化しやすい職種備考
IT・Web★★★★★エンジニア、デザイナー、PM全職種でリモート可能
コンサルティング★★★★★コンサルタント、アナリストクライアント対応もオンライン化
マーケティング★★★★☆マーケター、ライター、広報現場取材などは出社が必要な場合も
士業★★★★☆税理士、社労士、弁護士顧問業務はリモート化しやすい
金融・保険★★★☆☆事務、カスタマーサポートセキュリティ要件が厳しい
製造業★★☆☆☆バックオフィス、設計現場作業はリモート不可
小売・飲食★☆☆☆☆EC担当、経理店舗業務はリモート不可
医療・介護★☆☆☆☆事務、システム担当現場業務はリモート不可

📊 職種別リモート適性

職種リモート適性必要な環境整備
エンジニア★★★★★開発環境のクラウド化
デザイナー★★★★★デザインツールのクラウド化
ライター・編集★★★★★オンライン校正ツール
マーケター★★★★☆分析ツールへのリモートアクセス
営業★★★☆☆オンライン商談ツール
カスタマーサポート★★★★☆クラウド型コールセンターシステム
経理・財務★★★★☆クラウド会計ソフト
人事・総務★★★★☆人事管理システムのクラウド化
法務★★★★☆電子契約システム

リモート×地方採用の費用対効果

導入を検討する際、費用対効果は重要な判断材料になります。

📊 リモート採用導入の投資回収シミュレーション

項目初期費用月額費用年間費用
投資コスト
ツール導入費30万円--
就業規則改定(社労士費用)15万円--
セキュリティ対策20万円--
各種ツール利用料(10名分)-5万円60万円
投資合計65万円5万円125万円
削減コスト
採用コスト削減(年3名採用の場合)--165万円
オフィス縮小による賃料削減-15万円180万円
通勤手当削減(10名分)-10万円120万円
離職コスト削減(離職率低下による)--100万円
削減合計--565万円
年間効果+440万円

※従業員30名、リモート社員10名を想定したシミュレーション


成功のための最終チェックリスト

リモート×地方採用を成功させるための最終チェックリストです。

📋 導入前チェックリスト

カテゴリチェック項目確認
制度設計就業規則にリモートワーク規定を追加した
評価制度を成果主義に見直した
通信費・光熱費の負担ルールを決めた
環境整備ビデオ会議ツールを導入した
チャットツールを導入した
勤怠管理システムを導入した
セキュリティ対策を実施した
採用準備リモート前提の求人票を作成した
オンライン面接の環境を整えた
オンボーディングプログラムを設計した
運用準備コミュニケーションルールを策定した
定例ミーティングのスケジュールを決めた
メンター制度を設計した

まとめ

「リモート×地方採用」は、人材不足に悩む地方の中小企業にとって、大きなチャンスをもたらす新しい採用モデルです。

ポイントの振り返り

ポイント内容
なぜ今なのか大企業のオフィス回帰が進む中、リモート希望の優秀人材が転職市場に流入
主なメリット採用エリア拡大、コスト削減、多様な人材確保、離職率低下
成功の共通点成果主義への転換、コミュニケーション設計、オンボーディング充実
注意すべき点コミュニケーション不足、セキュリティリスク、評価の難しさ
成功のステップ適性診断→制度整備→環境構築→採用開始→オンボーディング

人材獲得競争が激化する中、「働く場所の自由」を提供できることは、中小企業にとって大きな武器になります。

まずは小さく始めて、自社に合ったリモートワークの形を見つけていきましょう。

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