
こんにちは。BizVoiceライターの田中です。
先日、ある経営者の方からこんな相談を受けました。
「売上は伸びているんだけど、なぜか手元にお金が残らないんです...」
彼の会社は従業員15名ほどの製造業。前年比で売上は120%に伸びているのに、利益率は逆に下がっていたんです。
詳しく話を聞いてみると、ある共通点が見えてきました。
多くの中小企業が陥る「売上は伸びるのに、利益が残らない」という罠です。
今日は、小さな会社が利益率を上げるために、最初に見直すべき3つのポイントについてお話ししていきます。
なぜ売上が伸びても利益が残らないのか
まず、基本的なことを確認しておきましょう。
利益率とは、売上に対してどれだけ利益が残っているかを示す指標です。
営業利益率の計算式
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
この数字が低いと、どれだけ売上を伸ばしても、手元にお金が残らないということになります。
中小企業の平均利益率
実際、中小企業の利益率はどれくらいなのでしょうか。
| 業種 | 平均営業利益率 | 理想的な利益率 |
|---|---|---|
| 製造業 | 3.2% | 8〜10% |
| 小売業 | 2.8% | 5〜8% |
| サービス業 | 5.1% | 10〜15% |
| 建設業 | 3.5% | 7〜10% |
| IT・情報サービス | 7.8% | 12〜18% |
見ていただくとわかるように、多くの中小企業の利益率は、理想的な水準を大きく下回っています。
つまり、改善の余地が十分にあるということなんですよね。
利益率が低い会社の共通点
私がこれまで見てきた、利益率が低い会社には、いくつかの共通点がありました。
| 共通点 | 具体的な状況 | 影響度 |
|---|---|---|
| 価格設定が不適切 | 原価積み上げ式で決めている | 非常に高い |
| コスト管理が甘い | 何にいくら使っているか把握していない | 非常に高い |
| 商品構成の偏り | 低利益商品ばかり売っている | 高い |
| 固定費の肥大化 | 売上に対して固定費が高すぎる | 高い |
| 無駄な値引き | 安易に値引きしてしまう | 中 |
これらの問題は、一つ一つは小さく見えますが、積み重なると利益を大きく圧迫します。
そして、多くの経営者が「売上を伸ばせば解決する」と考えてしまうんです。
でも、それは間違いです。
利益率が低いまま売上を伸ばしても、忙しくなるだけで利益は増えません。
むしろ、運転資金が膨らんで、資金繰りが悪化することさえあります。
ポイント1:価格設定を根本から見直す
最初に見直すべきは、価格設定です。
多くの中小企業が、価格設定を間違えています。
よくある間違った価格設定
最も多いのが、「原価積み上げ式」の価格設定です。
原価積み上げ式の例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 3,000円 |
| 人件費 | 2,000円 |
| 諸経費 | 1,000円 |
| 合計原価 | 6,000円 |
| 利益(20%) | 1,200円 |
| 販売価格 | 7,200円 |
一見、合理的に見えますが、この方法には大きな問題があります。
「お客様が感じる価値」を無視しているということです。
価値基準の価格設定に転換する
正しい価格設定は、「お客様がその商品・サービスにいくら払ってもいいと思うか」から逆算します。
価値基準の価格設定プロセス
| ステップ | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1 | 顧客が感じる価値を測る | 「時間が3時間節約できる」 |
| 2 | その価値を金額換算 | 「時間給3,000円×3時間=9,000円」 |
| 3 | 競合の価格を調査 | 「競合は8,000円で提供」 |
| 4 | 差別化ポイントを明確化 | 「サポートが手厚い」 |
| 5 | 価格を決定 | 「10,000円で設定」 |
この方法なら、原価が6,000円でも、10,000円で販売できる可能性があります。
利益は4,000円。利益率は40%です。
実際の価格改定事例
ある印刷会社の例をご紹介します。
価格改定前後の比較
| 項目 | 改定前 | 改定後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 平均単価 | 15,000円 | 22,000円 | +47% |
| 原価 | 12,000円 | 12,000円 | 変わらず |
| 粗利 | 3,000円 | 10,000円 | +233% |
| 粗利率 | 20% | 45% | +25pt |
| 月間受注数 | 100件 | 85件 | -15% |
| 月間売上 | 150万円 | 187万円 | +25% |
| 月間粗利 | 30万円 | 85万円 | +183% |
受注数は15%減りましたが、売上は25%増加し、粗利は約3倍になりました。
この会社がやったことは、シンプルです。
- 「安さ」を売りにするのをやめた
- 「早さ」と「正確さ」を強調した
- 納期を守る体制を整えた
- その価値に見合った価格を設定した
結果、「多少高くても、この会社に頼みたい」という顧客が増えたのです。
値上げの正しいステップ
いきなり全商品を値上げするのは、リスクがあります。
以下のステップで進めることをおすすめします。
値上げの5ステップ
| ステップ | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 1 | 新規顧客から値上げ | 1ヶ月目 |
| 2 | 低頻度顧客を値上げ | 2ヶ月目 |
| 3 | 中頻度顧客を値上げ | 3ヶ月目 |
| 4 | 高頻度顧客に事前通知 | 4ヶ月目 |
| 5 | 全顧客の値上げ完了 | 5ヶ月目 |
段階的に進めることで、顧客の反応を見ながら調整できます。
そして、重要なのは値上げと同時に価値を高めることです。
単に価格を上げるだけでは、顧客は離れていきます。
「この価格でも納得できる」という価値を、同時に提供する必要があるんですよね。
ポイント2:コスト構造を可視化して削減する
二つ目のポイントは、コスト管理です。
多くの中小企業が、自社のコスト構造を正確に把握していません。
コストの「見える化」が第一歩
まず、何にいくら使っているのかを、徹底的に洗い出しましょう。
コスト分析シート(製造業の例)
| 費目 | 月額 | 年額 | 売上比率 | 適正比率 | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 材料費 | 180万円 | 2,160万円 | 36% | 30〜40% | ○ |
| 外注費 | 60万円 | 720万円 | 12% | 5〜10% | × |
| 人件費 | 200万円 | 2,400万円 | 40% | 35〜45% | ○ |
| 家賃 | 30万円 | 360万円 | 6% | 5〜8% | ○ |
| 水道光熱費 | 15万円 | 180万円 | 3% | 2〜4% | ○ |
| 通信費 | 8万円 | 96万円 | 1.6% | 1〜2% | ○ |
| 広告費 | 25万円 | 300万円 | 5% | 3〜8% | ○ |
| その他 | 32万円 | 384万円 | 6.4% | 3〜5% | △ |
| 合計 | 550万円 | 6,600万円 | 110% | - | - |
この表を見ると、外注費と「その他」が適正比率を超えていることがわかります。
ここが改善のポイントです。
コスト削減の優先順位
すべてのコストを削減する必要はありません。
優先順位をつけて、効果の高いものから取り組みましょう。
コスト削減の優先順位
| 優先度 | 対象 | 削減方法 | 期待効果 |
|---|---|---|---|
| 最優先 | 無駄な外注 | 内製化できるものを見極める | 大 |
| 最優先 | 不要なサブスク | 使っていないサービスを解約 | 中 |
| 高 | 通信費 | プランの見直し、統合 | 小〜中 |
| 高 | 電力費 | 契約会社の変更 | 小〜中 |
| 中 | 事務用品費 | まとめ買い、共同購入 | 小 |
| 低 | 消耗品費 | 節約を呼びかける | 小 |
特に「無駄な外注」は、見直しの余地が大きいケースが多いです。
コスト削減の成功事例
あるサービス業の例をご紹介します。
コスト削減プロジェクトの成果(6ヶ月間)
| 項目 | 削減前 | 削減後 | 削減額 | 削減率 |
|---|---|---|---|---|
| 外注費 | 月60万円 | 月35万円 | 月25万円 | -42% |
| サブスク | 月12万円 | 月5万円 | 月7万円 | -58% |
| 通信費 | 月8万円 | 月5万円 | 月3万円 | -38% |
| 水道光熱費 | 月15万円 | 月12万円 | 月3万円 | -20% |
| その他 | 月20万円 | 月15万円 | 月5万円 | -25% |
| 合計 | 月115万円 | 月72万円 | 月43万円 | -37% |
月43万円、年間では516万円のコスト削減に成功しました。
売上500万円を増やすより、コストを500万円削減する方が、はるかに簡単です。
そして、コスト削減の効果は、すべて利益に直結します。
コスト削減で気をつけるべきこと
ただし、やみくもにコストを削減すればいいわけではありません。
削減してはいけないコスト
| コスト | 理由 |
|---|---|
| 人材育成費 | 将来の成長に必要 |
| 商品開発費 | 競争力の源泉 |
| 顧客満足向上のための投資 | 売上に直結 |
| 法令遵守のための費用 | リスク管理 |
| 安全対策費 | 事故リスクを考慮 |
「未来への投資」は削減せず、「無駄な出費」だけを削減する。
このバランスが重要なんですよね。
ポイント3:商品ミックスを最適化する
三つ目のポイントは、商品構成の見直しです。
多くの会社が、利益率の低い商品ばかり売ってしまっています。
商品別の利益率を把握する
まず、すべての商品について、利益率を計算しましょう。
商品別収益分析(小売業の例)
| 商品 | 売上構成比 | 粗利率 | 粗利貢献度 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 商品A | 35% | 15% | 5.25% | △ |
| 商品B | 25% | 45% | 11.25% | ◎ |
| 商品C | 20% | 30% | 6% | ○ |
| 商品D | 15% | 10% | 1.5% | × |
| 商品E | 5% | 60% | 3% | ◎ |
この表を見ると、商品Aは売上の35%を占めていますが、粗利率が15%しかありません。
一方、商品Bは売上構成比25%ですが、粗利率45%で、最も利益に貢献しています。
つまり、商品Bをもっと売るべきだということがわかります。
ABC分析で商品を分類する
次に、ABC分析を使って商品を分類します。
ABC分析による商品分類
| 分類 | 売上構成比 | 商品数比率 | 戦略 |
|---|---|---|---|
| Aランク | 上位70% | 約20% | 最重要。プッシュする |
| Bランク | 次の20% | 約30% | 維持する |
| Cランク | 下位10% | 約50% | 整理を検討 |
Cランクの商品は、売上も少なく、在庫管理の手間もかかります。
思い切って整理することで、経営資源を集中できます。
商品ミックス最適化の事例
ある小売店の事例をご紹介します。
商品ミックス見直しの成果
| 指標 | 見直し前 | 見直し後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 取扱商品数 | 350点 | 200点 | -43% |
| 月間売上 | 450万円 | 480万円 | +7% |
| 粗利率 | 28% | 38% | +10pt |
| 粗利額 | 126万円 | 182万円 | +44% |
| 在庫回転率 | 年4回 | 年6回 | +50% |
| 在庫金額 | 280万円 | 200万円 | -29% |
商品数を43%減らしたのに、売上は7%増加。
そして粗利額は44%も増加しました。
この会社がやったことは:
- 利益率の低い商品を150点削減
- 利益率の高い商品を50点追加
- 高利益商品を目立つ場所に配置
- スタッフに高利益商品を優先して勧めるよう指導
これだけで、大きな成果が出たのです。
バックエンド商品を作る
さらに利益を伸ばすには、「バックエンド商品」を用意することが有効です。
フロントエンド vs バックエンド
| 項目 | フロントエンド商品 | バックエンド商品 |
|---|---|---|
| 目的 | 新規顧客獲得 | 利益確保 |
| 価格 | 低〜中価格 | 中〜高価格 |
| 利益率 | 低い(10〜30%) | 高い(40〜70%) |
| 販売数 | 多い | 少ない |
| 例 | 初回限定セット | 年間契約、上位プラン |
フロントエンド商品で顧客を獲得し、バックエンド商品で利益を確保する。
この構造を作ることで、安定的に高い利益率を維持できます。
3つのポイントを実践した会社の変化
最後に、これら3つのポイントすべてに取り組んだ会社の事例をご紹介します。
ケーススタディ:製造業B社(従業員20名)
改善前の状況
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 年商 | 1億2,000万円 |
| 営業利益率 | 2.8% |
| 営業利益 | 336万円 |
| 主要商品の粗利率 | 22% |
実施した施策
- 価格改定:主力商品を平均15%値上げ(価値の再定義)
- コスト削減:外注費と固定費の見直しで月35万円削減
- 商品ミックス最適化:低利益商品を整理、高利益商品を強化
1年後の成果
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 年商 | 1億2,000万円 | 1億1,500万円 | -4% |
| 営業利益率 | 2.8% | 8.2% | +5.4pt |
| 営業利益 | 336万円 | 943万円 | +181% |
| 主要商品の粗利率 | 22% | 38% | +16pt |
売上は若干減少しましたが、利益は約3倍になりました。
社長はこう語っています。
「以前は売上ばかり追いかけていました。でも、利益率を意識するようになってから、経営が楽になりました。無理な受注を断れるようになったし、社員にも余裕ができた。何より、銀行残高が増えていくのが実感できます」
今日からできる3つのアクション
最後に、今日からすぐに実践できることを3つお伝えします。
アクション1:商品別の利益率を計算する
まず、すべての商品・サービスについて、利益率を計算してみてください。
簡易利益率計算シート
| 商品名 | 販売価格 | 原価 | 粗利 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|
この表を埋めるだけで、どの商品が儲かっているのか、一目でわかります。
アクション2:使っていないサブスクを解約する
次に、サブスクリプションサービスを見直しましょう。
サブスク見直しチェックリスト
- 過去3ヶ月で1回も使っていないサービスはないか?
- 同じような機能のサービスを重複して契約していないか?
- 無料プランで十分なのに有料プランを使っていないか?
- 契約当時と比べて使用頻度が減っていないか?
不要なものを解約するだけで、月数万円は削減できるはずです。
アクション3:値上げできる商品を1つ選ぶ
最後に、値上げできそうな商品を1つ選んでみてください。
値上げ候補の選び方
| 基準 | 説明 |
|---|---|
| 競合より価値が高い | 品質、サービス、納期などで優位性がある |
| 顧客満足度が高い | クレームが少なく、リピート率が高い |
| 価格競争になっていない | 価格以外で選ばれている |
| 原価が上昇している | 仕入れ値が上がっている |
これらに当てはまる商品があれば、まずは新規顧客から値上げしてみましょう。
まとめ:利益率を上げれば、経営は楽になる
ここまで、利益率を上げるための3つのポイントをお話ししてきました。
3つのポイントのまとめ
| ポイント | 具体的な施策 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 1. 価格設定 | 価値基準の価格設定、段階的値上げ | 粗利率10〜20%改善 |
| 2. コスト削減 | 無駄な外注・サブスクの削減 | 年間300〜500万円削減 |
| 3. 商品ミックス | 低利益商品整理、高利益商品強化 | 粗利率5〜10%改善 |
これらを実践すれば、売上を伸ばさなくても、利益は確実に増えます。
大切なのは、「売上至上主義」から脱却すること。
売上ではなく、利益を追求する
この意識転換ができれば、あなたの会社の経営は、必ず楽になります。
冒頭で紹介した経営者も、この3つのポイントに取り組んだ結果、半年で利益率を2倍にすることができました。
あなたの会社も、今日から変えられます。
まずは、商品別の利益率を計算することから、始めてみませんか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。







